この連載は、採用面接の前に
候補者がやっている面接対策への
「対策」をして、あらかじめ用意
しているであろう「想定問答集」を
使い物にならなくなるようにする
方法について書いていきます。
第6回の「面接対策破り」のテーマは
「一言で表現」
です。
そんなに単純ですか?
「自分のことを一言で表現する」
ことを求めるのがこの質問です。
簡単そうに思えるこの質問は、
実はそんなに簡単なものでは
ないと私は思います。
この質問に答えるには、少なくとも
二つのハードルがあります。
まず1つ目が、自分という人間の
ことをよくわかっていないと
そもそも質問に答えられない
ということです。
人間はそれほど単純ではありません。
時と場合によって取る行動が違う
ことも少なくないですし、首尾一貫した
信念に沿った「ブレない」行動を取る
ことも容易ではない。
就活生が活動を始めるに当たって
自己分析を必要とし、中年になっても
自分のやりたいことや適性について
よくわかっておらず「自分探し」する
のも珍しくないことからも、これは
明らかではないでしょうか。
2つ目は、把握している自分という
存在のことを一言でまとめる
「コピーライティング能力」です。
伝えたいことを短い言葉で、相手に
わかりやすく表現するには、相当の
コピーライティング能力が必要に
なります。
キャッチコピーと言えば広告に
使われているコピーが浮かびます。
これは、プロのコピーライターが
時間をかけて、何十何百という候補の
中から一つに絞って完成しています。
ここまで練られたものではなくても、
面接で自分のことを一言で
表現するのには、相当の
「言葉の選択能力」が必要に
なることでしょう。
この質問に淀みなく答えられる
としたら、それはまず間違いなく
「事前に用意していた」ものなの
でしょう。
そうでないとしたら「即興で」
答えたということになるので、
相当の能力があるのかもしれません。
もしくは、正確でないことか、
まったくの思い付きか。
いずれにせよ問題は
「なぜそう表現するのか」
という理由を、具体的な裏付け、
エピソードとともに答えて
もらうことです。
これとセットにして初めて
「一言自分表現」を要求する
質問は意味を持ちます。
気を付けるべきは、多くの面を
持っているはずの自分のことを
表現するのに、どうして
「その一面」を使ったのか?
ということです。
それも質問しましょう。
知られたくない一面を隠すために
そうしているかもしれないからです。