採用担当者は、多くの交渉ごとに
日々、さらされている。
しかもかなりヘビーな交渉だ。
相手も候補者だけでなく、社内
の人間であることも多い。
そんな交渉事を有利に進め、
人材採用しやすくする環境を
創ることをテーマに連載。
第3回の「交渉術」のテーマは
「採用希望をつっぱねる」
です。
必要のない採用
人材採用活動は、各部署からの
「採用申請書」が出てきて
始まることが多い。
これがないと始まらないと
言ってもいいくらいだ。
ただ、それを鵜呑みにする
ことは極めて危険である。
もしなんの検証もせずホイホイと
採用活動を始めているようなら、
そんな採用担当者は必要ない。
採用担当者の仕事は人を採用
することだけではない。
必要のない採用はしないこと。
そのためになら、申請してきた
部署とやり合う。
そのくらいの覚悟が必要である。
各部署としては、退職者が出たり
業務量が増えてきたりすれば、
人を採用して問題を解決する
ことは第一選択だろう。
特に、働き方改革という名のもと、
残業に対する目が厳しくなっている
今日では、それはなおさらのことで
あろう。
しかし、それでもなお、人材採用は
あらゆる手を尽くしたあとに、
どうしても必要な、やむを得ず
行うこととして認識しておくべき
なのである。
なぜなら、状況が反転し、
人員過剰感が出た場合や
組織変更等の事態が起こった時、
「人切り」をするハメになる
ことが目に見えているからである。
そして、その時に巻き込まれ、
場合によっては矢面に立つのは
人材採用担当である。
そのことが嫌だからということ
ではない。その時に会社も個人も
どれほどの痛みを伴うことになるか、
人事部門に長くいれば一度や二度は
経験している。
だからこそ、そのような事態になる
芽を、採用という入り口で摘んで
おくことが何よりも肝要だという
ことを肌感覚で知っている。
人を採用することが何を意味するか、
そしてどれだけのリスクを伴うこと
であるのか、それを一番よく知って
いるのが採用担当者である。
出てきた採用申請が本当に必要な
採用なのか、第三者の目で徹底的に
吟味する役目ができるのは、
採用担当者だけなのである。
最後の砦なのだから、しっかり
機能するように、毅然とした
態度を崩してはならない。
たとえ恨まれようと、煙たがられ
ようとも怯んではならない。
人材採用担当は、採用する時だけ
登場するのではなく、人が辞める
その時まで携わるのである。