採用担当者は、多くの交渉ごとに
日々、さらされている。
しかもかなりヘビーな交渉だ。
相手も候補者だけでなく、社内
の人間であることも多い。
そんな交渉事を有利に進め、
人材採用しやすくする環境を
創ることをテーマに連載。
第7回の「交渉術」のテーマは
「一度に一つのことしかやらない」
です。
マルチタスクはあり得ない
よほどの大企業でもない限り、
人材採用担当者が人材採用業務
「だけに」専念できる環境にある
ことはまれである。
多くは人材採用担当者であると同時に
人事担当者である。労務管理や人材教育に
関する業務も並行してやらなければ
ならない。
はてはそれだけにとどまらず、
給与計算や庶務業務、簡単な経理
までこなしていることも珍しく
ないだろう。
様々な事情があって現状がそれを許さない
のかもしれないが、これでは人材採用に
成功することはかなり困難を極める。
人材採用はできれば専属して、そうで
なくてもしっかりと腰を据えて、集中して
取り組む時間がないと成功は難しい。
片手間でやれる業務ではない。
経営学者ピーター・ドラッカーは
「成果を出す人は一度に一つのことに
集中して取り組んでいる」
と言っています。
マルチタスクは、人材採用に関わらず
避けるべきことなのです。
まして、人材採用は企業の将来を担う
「人材」を採用するための、最も
重要な業務のはず。時間もお金も
かけすぎるということはない。
そうであるからこそ、その業務に
集中して取り組む人が必要なの
ではないでしょうか?
にも関わらず、他の業務に時間と
集中力が削がれ、十分なことが
できていないというのが現状だ。
中途半端な募集が開始され、
なおざりに採用選考活動が進み、
なんとなく良さそうな人を、
さしたる根拠もなく採用する。
それが偽らざる人事採用活動の
姿ではないだろうか。
これではいけない。
人材採用を担当する本人にとっても、
企業にとってもいいことはない。
人材採用担当者は、採用活動に集中して
取り組むことができる環境を整えるべく、
いますぐ行動を開始するべきだ。
採用活動の重要性を訴え、説得し、
採用活動以外の業務をできるだけ
手放すことが必要である。
それもしないなら、中途半端な
採用活動をすることになるか、
働き方改革に逆行して残業を
増やして対応するしか道は
ないだろう。
そんなものは解決策でもなんでもなく、
ただの根性論である。それしか解決策が
見いだせないような組織なら、そもそも
採用などせず、犠牲者を増やさないほうが
世の中のためである。