採用担当者は1人では仕事は
できない。社内外の多くの
関係者の協力を得ながらの
仕事になる。
お願いする立場で強くは
言えないが、許されるなら
「そんなんじゃ候補者の厳しい
企業選別の目に耐えられないよ!」
と、採用を失敗させた犯人に突き
付けたい、関係者の言動について
の連載です。
第9回の「犯人」の言動は
「話を聴かない」
です。
聴きたいように聴く
人はおろかな生き物だから、
自分が見たいように物事を見て、
自分が聴きたいように話を聴く
と言われる。
面接官は、ともすればその過ちを
犯しがちである。そのことで候補者を
「話をきいてもらえなかった」と
落胆させることになる。
面接官には質問力や人物鑑定眼が
必要ではあるが、それよりも前に
「候補者が話していることを
『ありのままに』聴く」能力を
修得すべきであるし、そのことの
ほうがずっと重要である。
思ったほど、人は人の話を
聴いていないものなのだ。
そのことを実感した出来事が
先日あった。
シャンパンの品ぞろえ
採用活動の現場でのことではなくて
恐縮だが、ある人へのプレゼントで
「シャンパン」を買いにワイン専門店
を訪れた時のことである。
思ったよりも「シャンパン」の品揃えが
少なかったので、店員さんに
「『シャンパン』はここにあるもの
だけですか?」と質問した。
すると店員さんは
「はい、ここにあるものだけですが、
こちらに『スパークリングワイン』を
豊富に取り揃えております。
『シャンパン』もスパークリングワイン
ですから、基本的には同じです。
どちらでもよろしいかと思うのですが
いかがでしょう」
・・・頭にきた
私が質問したのは
「シャンパンの品揃えはこれだけか」
である。
スパークリングワインのことは
全く質問していない。
私はシャンパンしか買い求める
気はなかったから、他にもっと
品ぞろえがないかを質問した
のである。
ありのままに私の質問を聴いて
いれば、シャンパンの品ぞろえに
ついてだけ回答することになる
はずなのに・・・?
それなのになぜ、
スパークリングワインを薦め
られねばならないのだろう?
変換モード
もしかして、この店員さんが
勝手に頭の中で私の質問を
「聴きたいように」変換したと
いうことだろうか。
どういうことかというと・・・
変換①
ここにある『シャンパン』は値段が
高いから、もっと安い値段のものは
ないのかという意図の質問だろう。
変換②
そしてお客はワインに関して素人で、
シャンパンとスパークリングワインの
区別もつかない、シャンパンのほうが
なんとなく高給だというイメージを
持っているのだろう
結論
だったら、スパークリングワインの
ほうが値段も手ごろだし、味わい
だってそれほど変わるわけではない。
現実の行動
よし、ここは豊富に品ぞろえがある
スパークリングワインをオススメ
するのがお客様のためだ!
申し訳ないが、余計なお世話である。
もはやあなたとは話すことは
なにもない。私が早々にその店を
後にしたことは言うまでもない。
私はどうしてもその方に
『シャンパン』を贈りたかった。
それに私は、シャンパンとスパーク
リングワインの違いも知っている。
スパークリングワインにも質の
良いものはあるし、シャンパンと
遜色ないことだって知っている。
ワインは値段ではないことも。
余計なお世話
私のたった一つの質問から、私の
想いやパーソナリティまで瞬時に
読み取ることなど不可能だという
ことはわかる。
だがこの店員さんは、私の質問を
自分の聴きたいように聴いて
しまったがために、私が全く
望んでいない「とんちんかん」な
回答をしたばかりか、私を不愉快な
目に合わせることになった。
採用活動でも面接官が同じことを
候補者にすれば、それが候補者の
ためを想ってのことだとしても
「余計なお世話」だと思われる
だけである。
候補者の話は「ありもまま」に
素直に聴くことが肝心である。