人材採用は困難な仕事です。
これといった正解もなく
悩みと矛盾を抱えた仕事です。
しかし、立ち止まるわけには
いきません。
この連載では、難しい問題、
答えがない問題にあえて挑み、
明日の人材採用のために活かせる
「なにか」を提供することを
目指します。
第6回の「テーマ」は
「説得できるか」
です。
説得は罪である
超売り手市場で採用難の現在、
内定は出すものの決め手に欠け、
なかなか入社には至らない場合
が多いことだろう。
かつてバブル期には、内定者が
辞退をしないように、様々な
「工作」をしていた。他社に
乗り換えられないようにする
ためならなんでもしたようだ。
リゾートホテルに長期間滞在させ
「あごあし付き」の接待をする
ことなどはまだかわいいほうで、
毎日のように先輩社員が夜の街へ
連れ出して、ここには書けないような
「接待」をしたりしていたと聞く。
現在ではコンプライアンスの問題など
もあってそこまで露骨ではないにせよ、
「オワハラ」という言葉もあるように
就職活動を終了させるように強制する
ようなことをしている企業もある。
そんな行動に採用担当者が走るのは、
採用担当者にとって内定辞退が
一番の痛手であるからだ。
それまでかけた時間もコストも
最大になっているからであり、
それを「回収」するためなら多少
強引なこともする。
それでも何度か内定辞退が続くと、
内定を辞退される「根本理由」を考え
始めるのだが、それが的外れなのが
問題なのである。
そしてまず初めに手を付けるのが
「熱心に説得をすること」では
ないだろうか。
もう一押ししていれば・・・
熱意をもって話をしていれば・・・
タイミングさえよかったら・・・
これらに共通するのは
「あと少しだったのに」
「惜しかったなあ」
という思いだ。
クビを縦に振ってくれなかったのは、
説得ができなかったからであり、
その技術を磨けばいいのではないか?
そうすれば内定辞退は減らせる。
仕事がやりやすくなる。
危険な考え方である。
あと少しでもないし、惜しくもない。
説得することでどうにかなる世界
ではない。
それどころか、採用担当者が
内定者を説得しようとすることは
罪でさえある。そんなことをすれば、
内定者の人材を狂わせることにも
なりかねない。
説得などしてはならない。
伝えるべきことを伝え、内定者が
望むことであれば積極的に情報を
開示し、真摯に対応することしか
できることはない。
決めるのは内定者である。
その決定に過度に干渉するような
ことはしてはならない。