企業や組織が生き残るための
最大の武器は人材である。
そうであるならば、その人材を
採用するために積極的な採用活動を
行うことが最大の生き残り戦略で
あることは明白だ。
この連載は、生き残り戦略として
人材採用を考える場合にやるべき
ことについて、厳選して書く。
第5回
「卒業」
です。
辞めない人を求めない
せっかく採用した人には、
辞めずに長く働いてほしい。
その気持ちはよくわかる。
しかし、それを求めてはいけない。
辞めない人を求めれば、人材は
集まらない。
それに関連して、数年単位で退職を
繰り返している人を色眼鏡で見る
ことも控えねばならない。むしろ
優秀な人だからこそ転職を繰り
返しているものと見なければならない。
退職する理由は様々あるだろうが、
後ろ向きの理由ばかりとは限らない
ことを認識しなければならない。
給料が安い、休みが少ない、
長時間労働、職場の人間関係など
だけが退職理由と決めつけない。
少なくともこの態度が必要だ。
なぜなら、これからは、職場には
不満はないが「新天地」を求める
という理由で、しかも数年で退職
していくことを認める必要がある。
いや、むしろそのような選択をする
社員を応援するくらいにならないと
人材は集まらないだろう。
つまり、退職ではなく卒業だ。
自らの可能性を試す機会として
転職を「卒業」だと捉えて職場を
去っていく動きが活発になって
いくだろう。
まるでそれは、アイドルグループの
メンバーが、加入から一定の時間が
経てば、新天地に向かってグループを
去っていく動きに似ている。
アイドルグループに長くとどまる
ことは、年齢的にもキャリア的にも
ある時点からはマイナスになる。
そのことはアイドル本人も意識して
いることだろう。
だから、常に次に行くステージを
見据えて活動している。問題なのは、
いつ辞めるかということであり、
辞めないことではない。
グループの人気の浮沈は激しく、
いつ解散になるかわからない。
それだから、解散まで所属する
ことは美徳ではなく、単なる
こだわり、臆病、逃げ腰でしかない。
企業や組織もいつなくなるかは
わからないという点ではアイドル
グループと大差ない。自分は悪く
なくても不祥事をおこして会社が
危機に陥ることもある。
最近では日産自動車がそうだし、
私自身、所属していた会社が不祥事を
起こして業務停止になり、最終的には
消滅したという経験を持っている。
働く人に、長く働くように求める
ことは、もはや罪になっていると
言っても過言ではない。その想いは
届くことはないだろう。
その代わり、卒業を見守り、気持ち
よく送り出し、応援することこそ、
あるべき態度である。