人材採用で重要なことは、
やるべきことをやることではない。
やってはいけないことをやらない
ことなのです。
この連載では、人材採用でやっては
いけないことを「べからず集」として
書いていきます。
第1回は
「Mustを決めるべからず」
です。
ルートは一つじゃない
登山ルートは複数あり、登山者が
自分の判断で選択する。自己評価と
自己責任がすべてだ。
登頂というゴールにたどり着くという
目的が達成できるのであれば、他人が
ルート選択に関してとやかく言うべき
ではない。
人材採用でも同じことが言える。
この仕事をやってもらいたいのだが、
出来る人はいますか?と問いかける。
仕事をやり遂げるために必要だと、
募集する側が勝手に考えたスキルや
経験に関する「Must条件」を提示
するべきではない。
しかし、多くの企業は逆のことを
している。どういうことか?
順を追って説明していく。
人材採用を行うのは、やってもらいたい
仕事があるからである。どんなルートを
選択しても、仕事をやり遂げるという
登頂を果たしてくれるなら、どんな
スキルや経験を持っている人かという
ことは問題にならない。
しかし、多くの企業はそうしていない。
募集要項に「必須の」応募条件として
スキルや業務経験、保有資格などを
書き連ねて、それ以外の応募は
基本的に認めず門前払いする。
この仕事をやり遂げるためにはこれらが
「Must」の条件であり、成功するには
一つの方法しかない!それ以外は
認めない!そう言っているのと同じだ。
しかし、その根拠はといえば、募集
する側の勝手な思い込みではないか?
本当に、その仕事を達成するのには
その方法しかないのであろうか?
募集する側が思いもつかない
「登山ルート」があるのではないか?
医師や美容師など、仕事をするのに
必須の国家資格がある場合などを
除き、募集に際して「Must」の
条件を決めることは傲慢である。
登山者の力量に関わらず「このルートで
登ってください」と強制するのではなく、
私はこのルートで登りたい、できると
思う根拠はこれこれだ!ということを
説明してもらい、納得できれば通せば
いいだけのことである。
その仕事をやり遂げることができる
理由を自己申告してもらい、それに
ついて判断するプロセスは、選考過程
で踏めばいい。募集段階ですべきこと
ではないのである。
Must条件を設けることによって、
優秀な人材を門前払いしてしまって
いる可能性に注意を向けるべきだ。