人材採用で重要なことは、
やるべきことをやることではない。
やってはいけないことをやらない
ことなのです。
この連載では、人材採用でやっては
いけないことを「べからず集」として
書いていきます。
第5回は
「交渉するべからず」
です。
どんな交渉なら応じるべきか
人材採用は、候補者との交渉の連続だ。
しかし、多くの採用担当者は、応じる
べき交渉と、応じるべきでない交渉の
区別がついていない。この点を間違え
たために、採用活動が失敗に終わって
いる。
人材採用活動は、お互いの条件を
出し合ったうえで合意に至るか
どうかを、いろいろな方法で、
時間をかけて交渉しながら確認して
いくプロセスだ。交渉なしには採用
活動の終了はない。
入社にあたって、交渉によって
すり合わせるべき条件はそれこそ
多岐にわたる。
給与はいくらか?に始まり、用意する
ポストは?福利厚生は?住宅の用意は?
ストックオプションをつけるのか?
などなど、挙げればきりがない。
だが、この交渉は、内定を出し
入社が決まるという明確なゴールに
至るために、お互いが納得できる
妥協点を見出すための建設的なものだ。
合意に至ったときに、お互いにとって
メリットがあるから交渉するのである。
つまり、応じるべき交渉は、双方に
得るものがあり、妥協する価値が
あるものだけである。一方だけが
妥協しなければならない交渉には
応じてはならない。それは交渉では
なく「ごり押し」だからである。
具体的な、応じるべきでない交渉は
「面接日時のリスケジュール」だ。
いったん決まった面接日時の変更は、
基本的には応じてはならない。
この要請に応じることのメリットが
採用担当者にはなにもない。
面接官のスケジュールとの調整を
しなければならないし、面接場所の
確保もやり直さなければならない。
それらの連絡調整に、かなりの時間を
取られることになる。
リスケジュールに応じることで、
採用担当者が得るメリットがあると
すれば、候補者からの「感謝の気持ち」
であろうが、かけた労力に比べれば
割に合わない。
しかも、それで確実に候補者が面接に
来る保証もない。ドタキャンも珍しくない。
日時変更が、候補者にとってより重要な
面接とのバッティングが理由だったのかも
しれないと思われるケースもある。
面接日時のリスケジュールは、
よくあることだけに気軽に応じて
しまいがちだ。だが、その小さな
ことに気軽に応じたことで候補者に
主導権を握られた結果、採用に
至らないのである。
どんな小さな交渉でも、双方にとって
メリットがあることなのかどうかを
冷静に見極めることである。