人材採用で重要なことは、
やるべきことをやることではない。
やってはいけないことをやらない
ことなのです。
この連載では、人材採用でやっては
いけないことを「べからず集」として
書いていきます。
第9回は
「退職理由訊くべからず」
です。
時代遅れを露呈する質問
価値観はある日突然、気づかぬ
うちに変化するものである。
昨日まで常識とされていたことが
今日には非常識とされる。
古くなった常識にしがみついた
ままでいると、運が悪ければ、
そのことで罰せられる事さえある。
採用面接における「退職理由を訊く」
ことも、もはやそのような
「価値観が知らぬ間に変化した」
ことなのである。質問すること
自体が非常識なのだ。
退職理由を質問することは、多少の
ことがあっても辞めずに、問題を
起こすことなく、長く勤めてくれる
人かどうかを探るためである。
そのような意識はもはや時代遅れで
あり、いつ断罪されることになるか
わからない。
退職を悪いことだと考え、そのような
行動に走る人物を疑いの目で見る。
何か問題があるのでは?隠している
のではないか?という偏見に満ち、
ウチでも同じことをするのでは?
と疑心暗鬼たっぷり。
そうではなく、人に成長の機会を与え、
取り組む価値のあるミッションを提供し
人が次のステージに向かう段階になった
時には、潔く送り出す。
そのような企業・組織の在り方で
なくては、立ち行かなくなる。
なぜなら、採用は、もはやいずれは
退職していくことを前提として行う
べき時代だからである。
企業・組織は、人を使うのではなくて
人の能力を使う機関である。人の能力が
使えなくなったり、あるいは持て余す
ような場合には違う場所、ステージを
勧めることが必要だ。ドライな関係の
ように見えるが、いつまでも人を1つの
場所にとどめおくことが良いとされる
時代は、もうとっくに終わっている。
考え方を変えねばならない。
かつての終身雇用の時代のように、
人の人生を丸ごと抱え込むことは
もはやできない。その前提で考える
べきであるにも拘わらず、辞めない人、
長く働いてくれることだけを一方的に
求めるのは筋違いである。
そんなに辞めない人が欲しいのなら、
前の職場をクビになるなどして、
他には行く当てがない人を採用すれば
よい。どんな状況になっても、見事に
あなたの企業・組織にしがみついて
くれるであろう。
ただし、成果を出してくれる保証は
どこにもないのであるが。