反逆し続けた働き方 Vol.9「出来レース」


やる前から結論が決まっている仕事ほど

やる価値のない仕事はない。

「仕事をやっています」とアピールすること

だけが目的の仕事や、通るはずはないと思い

ながら形だけ出す提案なども同じ性質の仕事だ。

 

残念なことに、このような仕事をして

「その場を凌ぐこと」だけを目的に

仕事を命じられたことが何度かある。

 

特に印象に残っている仕事は、新しく親会社に

なった会社から派遣されてきた幹部に対して、

今後の方針について企画書を出すことであった。

 

そのために社内意識調査を実施して結果を

分析し、改善点をまとめて提案するのだが・・・

信じられないことに、私の上司からは

「調査結果がどうであれ、こういう方向性の

企画書を作って提出してほしい」

という指示があったのである。

 

当時の私は耳を疑い、なぜそんな仕事を

しなければならないのか。これではただの

出来レースの仕事ではないか、と憤慨した。

しかし今にして考えてみれば、この指示には

それなりの根拠があったのだと思う。

 

当時は気づかなかったが、親会社に買収されて

まだ日が浅く相手の腹の内がよくわからない

という事情があるので、探りを入れる目的が

あったのだろう。当たり障りのない提案書を

提出して様子を見るという深謀遠慮だったの

かもしれない。

 

企画書を出さず何も提案しないという選択肢は

ありえないが、かといってあまりに早い段階で

ストレートにこちらの手の内をさらしたくない。

だからひとまず、出来レースの指示を部下に

してでも、まずはこの場を凌ぐ選択をしたの

かもしれない。

 

当時の私は単純だったのだ。それどころか

上司に食って掛かり、仕事を半ば放棄する

ようなことをしてしまった。上司に逆らう

ことは厳に避けなければならないことなのに。

それができなかったのは、私が未熟であった

せいなのだ。目の前の仕事しか見えていなかった。

 

上司との信頼関係やコミュニケーションがもっと

あったら、その裏にある事情を明かしてもらう

こともできたかもしれない。明かしてはもらえ

なくても、察することはできたかもしれない。

後悔している。

 

 


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