気を付けて仕事をしていないと、
生身の人間がお金に見えたり数字に
見えたりしてくる。
総務や経理など、ルーティン作業が
主体の仕事をしている人は特に
要注意である。
私は人事部門に所属していて主な仕事は
採用担当であったから、仕事がルーティン
作業に陥ることはなかった。
候補者はそれぞれに個性があり、様々な
経歴や事情を抱え、個別対応が必要に
なってくるからだ。
だが私の場合、ルーティン作業に陥る危険性を
よく認識しているつもりだ。というのは、
人事の仕事への「入り」が給与計算、社会保険
事務であったからである。
給与計算は毎月決まったスケジュールに
従って手順通り、間違いがないようにする
ことが最重要だ。社会保険事務も「お上」
相手の手続きに柔軟性や例外はなく、法律
通りに粛々と進めるのが仕事だ。
結果、給与計算や社会保険事務を長くして
いると、ややもすると人を社員番号でしか
識別できなくなる。個別の事情や感情を
推し量ることが難しくなり、単なる事務屋
さんに成り下がってしまう。
硬直化した人事の仕事は、とかく
「ひとごと」と揶揄される。
人の心の微妙な動き、つまり「機微」を
とらえて、きめ細かな対応ができない
人事は、企業・組織のお荷物である。
人事は難しい仕事だ。遵守しなければ
ならない法律も多く、次から次へと
新しいことが持ち込まれる。
働き方改革に始まり、ダイバーシティ、
LGBT、BPO、人手不足対策などなど。
これらへの対応のために、時には
個人の事情に配慮できないこともある。
そんな時に忘れてはならないのは、人事の
仕事には二つの心得、すなわち
「人の感情の機微を理解しようと努めること」
「人の痛みや苦しみに共感すること」
これを「人事」の文字に「二つ」を足して
「一大事」として考えなければ務まらない。
この点に欠けている人は人事の仕事には
間違いなく向いていないが、ほかの仕事
でもうまくいかないだろう。