ここ30年ほど、大卒新卒社員が
「3年以内に3割が退職する」
という傾向は変わっていないという
事実に、みなさんは驚かれるだろうか?
「最近の若い者は根性がない。すぐやめる」
という指摘は、少なくとも当てはまらない。
30年前にそんなふうに「嘆かれていた側」の
若者も、今では必要十分なほど年を取り
「嘆く側」になっている。
古代エジプトの壁画にも「最近の若者は・・・」
という記述があるという。古今東西、若い人の
行動を「若い人の性質」のせいにして嘆くのは
変わらない傾向のようである。
この30年間という時間は平成とほぼ重なる。
この間、人余りの時代も人手不足の時代も、
好景気も不景気もあったにも拘わらず、
若干の変動はあるものの
「3年以内に3割が退職する」
という傾向は変わっていない。
このことは、退職するかどうかの判断に
外部環境はそれほど影響を与えない、という
ことを意味している。いやなことがあって
退職したくても、辞めた後で職がないから
思いとどまるということはあまりない、
ということだろう。
「退職した経験がないから見込みが甘い」
あるいは「まだ若いから職は見つかる」という
思い込みもあるだろう。実際、若いうちは
条件にこだわらなければ転職できないという
ケースは少ない。
だが、退職者が続出するという現状に対し
新卒社員の「性質」に原因があると決めつけ、
新卒社員の「扱い」を改めてこなかった
企業・組織の責任は大きく、ツケは大きい。
その「扱い」に関して問題があることの多くは
理不尽なことを強いる企業・組織の「文化」
である。研修、教育といえば聞こえはいいが、
その実態はたんなる押しつけ、洗脳である
ことも珍しくない。
数年前、徹底した「意識改革」を迫る新人研修を
受けた結果、その社員が自殺したという事件があった。
企業・組織の人事部門が行ったものではなく外部の
研修会社によるものであったが、その内容は、およそ
研修とはいいがたいもの。
どんなものだったかというと、参加者の前で過去の
失敗や屈辱的な経験といった、誰にも言いたくない
「トラウマ」を強制的に発表させるという内容。
こんな教育を受けて得た「成果」が、これから
仕事上で必要になることは絶対にない。これを
「意識改革」と呼ぶ人の神経が私には理解できない。
こういう理不尽な扱いを受け入れる
必要はない。こんな害悪をまき散らす
企業・組織は消えてなくなるのが世の
ためである。
企業・組織は、このような扱いを社員に
していないかどうか、その結果が退職者が
後を絶たない、あるいは社員の満足度が
低い原因ではないかと真剣に考えなければ
ならない。