「卒業」時代の人材採用 Vol.6「力を貸してもらう」


「人を使うのではなくその能力を

使うのである」

「戦国武将たるもの、のどの渇きを

潤すように人材を求めるべきである」

 

これは戦国の名将、武田信玄の言葉だと

言われる。信玄は人材をなによりも

重視したからこそ、強力な家臣団を

形成できた。また、こうも言っている。

 

「人は城。人は石垣。人は堀。

情けは味方。仇は敵なり。」

 

この言葉を裏付けるように、信玄の

本拠地は「躑躅ヶ崎館」といった。

つまり石垣や堀に囲まれて防御に

優れた城ではなく、普通の館である。

これは、優秀な人材さえいれば城壁や

堀などなくても防御に事欠くことはない、

という自信の表れであったといわれる。

 

とはいってもなにが起こるかわからない

戦国時代。だから実際には、厳重な防御

設備は施されていて、万が一には備えて

いただろう。だが、その根本にあったのは

「人材がすべて」という考え方であった

のは間違いない。

 

現代の企業・組織も人材がすべてである

ことには変わりはない。だが、実際には

人材を求めることよりもむしろ、経営者の

思いのままに都合のいいように動く

「駒」を欲しているだけの企業・組織も

少なくない。つまり「使い捨て」である。

 

働く人は、自分の労働力を商品として

提供することで給料を得ている。

企業・組織はその商品を購入して使う

ことによって利益をあげる。

労働力という商品を購入したのだから

それをどう使おうと勝手だというのが

これまでの企業・組織の考え方だった。

 

これまではそれでもよかった。問題が

起こることも少なかった。なぜなら、

終身雇用によって一生、労働者は面倒を

見てもらえる、さらに年功序列で自然と

給料があがっていく。そんな「うま味」が

あったからである。その安心感のために、

多少のひどい扱いであっても耐えることが

出来たのである。

 

しかし、そんな時代は終わった。

それどころか、人手不足時代になって

企業・組織の立場は滅法弱くなった。

なぜなら、使い捨てにされることが

分かっていて、労働力しか売り物を

持たない労働者がそれを引き渡す

はずがないからである。

 

いつまでも「人を使う」という発想による

のではなくて「人の能力を使う」という

考え方にシフトしなければならない。

お金を払って労働力を所有するのではなく、

一定期間「借りている」という認識を持つ

ことである。

 

所有物だと思うからぞんざいな扱いを

してしまう。「借り物」だと思えば大切に

扱うものだ。そして一定期間が過ぎれば

「卒業」させて市場に返す。人材市場は

これからこのような形態に移っていく。