企業・組織にとって、みずからの
欠点を正確に把握し、それを余す
ところなく伝えることが「卒業」
時代の人材採用において欠かす
ことのできない行動である。
しかし、多くの企業・組織はこの
点を勘違いしている。典型的なのは
「数字データ」を示すことだ。
どういうことかというと「働きやすさ」
を示すために、平均年収や残業時間、
退職者の数、有給取得日数や消化率などの
数字データを算出し、示すことである。
なぜなら、これほど操作しやすいものは
ないからである。マズい数字は、姑息な
操作をすることによって「お化粧」
できるからである。
たとえば、平均年収は非正規雇用者を
含むか含まないかで大きく変わる。
世代別、在籍期間別にすればもっと
変わってくる。だから、求職者の年齢が
マズい数字が出ている世代にあたって
いるのなら、その数字は示さず全体の
ものを示すなど操作ができてしまう。
ちなみに、よく求人票に書いてある
「モデル年収」であるが、どんな人を
モデルとしているのか定かではない
ために参考するのはおススメしない。
裏側を言えば、この数字はともかく
「エース級人材」の数字である。
一般的な数字ではない。多くの人は
この水準には達しない。
残業時間も右に同じくだ。非正規雇用者は
そもそも残業はそれほどしないだろう。
退職者数も、非正規雇用者を含めれば
多くなるだろうが、それで離職率が高い
ということには必ずしもならない。
有給取得日数と消化率も、一斉取得日を
設定したりしていれば取得日数は多くなる。
人の入れ替わりが激しく、有給日数が
そもそも少ない人が多ければ消化率は良くなる。
統計データの不正は国レベルでも起こって
いることである。一介の企業・組織が示す
ものは推して知るべしではないか。誠実な
企業もあるだろうが、データの算出根拠を
示す必要もなく、そもそも求職者の立場から
その根拠を尋ねるのは難しく、追及される
心配もほとんどない。推して知るべしとは
そういうことだ。
つまり、そんな数字を示すことは「欠点」
の表明になっていないし、求職者にとって
なんの参考資料にもならないのである。
それよりは「企業文化」についての情報を
提供するほうがはるかにいい。どんな
企業・組織にも独自の文化が存在し、
その文化に馴染めないことは乗り越え
がたいものだからである。しかも、
外からはその「文化」をうかがい知る
ことが難しい。積極的な開示を期待
するよりほかないのである。