選考過程において、特に面接のときには
求職者は多かれ少なかれ演技をしている。
採用選考は「いかにそれに騙されないか」
の戦いだといってもいい。
なぜなら、選考にあたって事前に提出される
履歴書・職務経歴書に書かれた内容は、
少なからず誇張、自分に都合のいい解釈、
隠蔽のオンパレードだと考えたほうがいい。
さらに面接においては、退職理由や志望動機
などの、事前に「想定される質問」に対し
模範解答を準備しておくことができる。
求職者に予想されている質問を避けようと
して「奇をてらった質問」をしても、
今度は回答を正確に評価できるのか、
という問題が残る。
騙されないための武器としてさまざまな
適性検査があり、面接のテクニックがあり、
AIによる書類選考がある。しかし、それらが
どれだけ進化したとしても騙されないのは
不可能だろう。
経験を積んだ人事担当者でも演技を見破るのは
難しいし、適性検査には攻略法がある。AIの
進化も、いわゆるなにか特定の範囲内に特化
したものに限られ、人物を評価するという
ような広い範囲にわたる汎用型AIの実現は
難しいとも言われている。
解決策があるとしたら、いやむしろ、
それしかないと考えるが、求職者に
対する「気配り」をすることによって
求職者が「演技」をする気を起こさせ
ないことである。演技に騙されない
唯一の方法は、演技をしないように
してもらうことだけである。
そのためには、面接は試験ではなく、
攻略し突破するものではない。
人事担当者は「倒すべき相手」では
なく、求職者の味方である。
このことを全身全霊をもって示すことだ。
そのために欠かせないのが「気配り」
なのである。
それはつまり、求職者が望むことは
なにかを知ろうと歩み寄り、寄り添い、
実現可能なことは何でもやることだ。
望まないことはやらず、疑いや決めつけも
しないことでもある。しかし下手に出る、
おもねることであってはならない。
このスタンスを保つのは難しい。一歩
間違えば踏み外してしまうだろう。
だが、難しく考える必要はない。
忘れないでおけばいいのはただひとつ、
求職者に信頼を寄せ、味方であろうと
気を配ることだけである。
求職者に気を配り、信頼を寄せるのに
難しい訓練は必要なく、適性検査を
実施するお金もかからない。いずれ
一緒に働くことになるかもしれない
人を疑う理由はない。