人材採用に欠かせないプロセスが
採用面接であり、面接官を誰にするかは
非常に重要な問題だ。しかし、ほとんどの
人は面接をうまくこなすことができない。
人事部門に所属し採用活動に従事したことが
ある人なら、このことは重々承知している
ことである。
なぜか。それは面接方法に関して専門の訓練を
受けていないからではなく、そもそもが人は
面接という手段には向いていないからである。
なぜそう言い切れるのか。それは、人には感情が
あり、好き嫌いがあるからである。そして、
そのことに非常に左右されやすく、左右されて
いることにも無自覚だからだ。つまり、ちょっと
したことでバイアスがかかり、判断が変わり、
一定しないということだ。
これは人間である以上、克服は非常に困難だ。
面接官としての訓練や経験を積めば、求職者の
経歴やスキルを冷静に観察し、公平に判断し、
正確に見極めることができるようになる
というのは買いかぶりである。
平たく言えば「見た目」の印象にはかなりの
強力な力があるということだ。清潔感があり、
さわやかで元気がよい、美男美女であるなど、
人に「好印象」を持たれる人は採用されやすい。
このご時世、なかなか正面切って言えないことが
含まれてはいるが、誤解を恐れずにいえば、
そういう傾向があるのは事実である。
実際、美男美女のほうが、そうではない人より
生涯年収が数千万円から億単位で高いという、
学者が調べたデータがあり、本も出ている。
さらに、ある実験によって確かめられたこと
であるが、美男美女の被告人のほうが、そうで
ない被告人よりも短い刑期を言い渡される
傾向があったという。犯罪事実から言えば
「美男美女」のほうが悪質性、残虐性が高い
場合でさえ、この傾向が見られたという。
日本の裁判員裁判でも、プロの裁判官ではない
一般市民から構成される裁判員が「予断をもって」
判断しないよう、被告人はスーツとネクタイ、
革靴を着用している。いかにも犯罪者風の
格好をしていれば、それによって判断が左右されて
しまうという事実を日本の司法が認めているという
ことではないか。
余談だが、裁判員裁判で被告人が着用している
衣服には工夫がある。逃亡を防止するため
「革靴」は革靴を模したスリッパ。
ネクタイは締めるタイプでなくワイシャツに
「引っかける」タイプのものである。
これらの事情やケースからもわかるように、
限られた人数で、専門の訓練も受けていない
面接官によって面接すること自体が良い方法
ではないのではないだろうか。
ここは思い切って、面接という方法ではなく
「オーディション」をしてはどうか。
入社することになれば上司になり、同じチームで
働くことになる人を全員集め、求職者に対し
自由に質問して「印象で」判断する方法だ。
予断を持たないように、履歴書・職務経歴書も
事前に見ないですることはもちろんだ。
どれだけ気を付けても見た目に左右され、
バイアスがかかり「色眼鏡」で見ることから
逃れられない人間をカイカブリ、面接官として
座らせることに終止符を打ってもいいのでは
ないだろうか。