これからの時代、企業はサラリーマンで
一生を終わる人を採用してはならない。
逆説的だが、いつでも独立できるだけの
実力を持つ人材を抱え、現実に独立する
人がいてこそ、組織は発展する。
では、一生サラリーマンで終わりそうな
人材はどんな特徴を持っているだろうか。
第十回のテーマは
「How toに飛びつく」である。
本屋に行くたびに残念に思う
みなさんはどれくらい本屋さんに行かれる
だろうか?売れ筋なのであろう、店頭に
平積みにされている本を見て、違和感を
感じられたことはないだろうか?
「こうすればうまくいく!」
「やることはたったこれだけ!」
「だめだった私にもできた!」
などなど、すぐに実践でき、すぐに成果を
求める人に「How to」を詳しく紹介した本
ばかりである。
中を見ても、やたら文字が大きい。
章立てのなかの「小見出し」1テーマ
あたり数ページで細かく区切って
書かれている。そのうえ、ご丁寧にも
「章のまとめ」「これまでのまとめ」が
ついている。
これだと、立ち読みでも本の内容を
把握するのには十分すぎるくらいだ。
お手軽に知りたい情報が得られ、
お困りごとや疑問に対する答えは、
目次からまるで辞書を引くように
簡単に入手出来てしまう作りに
なっているようだ。
「読みやすい」「わかりやすい」ことが
至上命題なのであろうか。一昔前には
「サルでもわかる」と銘打ち、難しい
ことを簡単に説明したシリーズが流行
したが、いまやベストセラーになる本は
すべてが「サルでもわかる」本と化して
いるようだ。
まるで、すぐに読むのをやめてしまい
最後まで読み進められない読者を
なんとか引き留めようとしている
かのようで、そんな本を読むのが
情けなくなってくる。
容易に答えが出ない問題を考える
このような本ばかりを読み、素早く情報を
入手し、書いてあることを鵜呑みにする
ような読み方ばかりをするのは危険だ。
なぜなら、現実における問題は複雑で、
すぐに答えは見つからない。しかも、
答えは複数ある場合もあるし、簡単には
結論が出ない問題もある。それらに対処する
力こそが重要なのに、それが失われてしまう。
それよりも、古典や名著と言われる
難しい本を、一冊でいいから読み通して
みることのほうが有効だ。
ドラッカー、シェイクスピア、ヘーゲル、
カント、川端康成など、有名な著者の本。
教科書にも出てくるような「源氏物語」
「ファウスト」「種の起源」「社会契約論」
などの古典でもいい。読んでみることだ。
これらの古典や名著は、多くの人と長い
時間による選別と試練に耐えて今日に
残っている。読んで得るものが多いと
評価されているからこそである。
一回読んだだけでは意味がわからない
ことも多いだろう。しかし、じっくり
読んで、意味を考えながら読む訓練を
積むにはいい機会である。
このように、容易には答えにはたどり
つけなくても「考える」という行為は、
必ず役立つときがくるものである。