超売り手市場で採用難の時代、企業は
採用に関してあらゆる手を駆使して
取り組む必要がある。
そのためには「応募がない」ことには
始まらないので、この連載では求人に
応募がない時の対処法について具体的に
考えていく。
第三回のテーマは
「採用する理由を再考する」である。
「退職者が出る→採用」が必要か
人事部で採用の責任者をしていたころ、
各部署からの人材採用の依頼を厳しく
吟味していた。具体的には、退職者が
出た部署の採用依頼は、基本的には
再考を求めていた。ずいぶんと煙たが
られていたことだろうと思う。
人事部門は社内の人間が顧客である。
彼らの機嫌を損ねるようなことは
したくないので、求めには応じる
ことに傾きがちである。しかし、働く
人のために働くのが人事担当の務め。
人事担当者の職業的良心だと考える。
その任務を全うしようとすれば、時には
厳しい態度で臨まないといけないことも
ある。私にとっては、それが採用依頼に
対する厳しさであった。
認めないわけではない。退職者が出た
ことは、新たに人材を採用することの
立派な理由であることは間違いない
からである。しかし同時に、採用する
ことだけが解決策でないこともまた、
事実なのだから。
つまり、退職者がでたことを機会と
とらえ、退職=採用と安易に考えず、
採用しないで済む方法を検討する
ことが重要なのである。
たとえば、部署内の業務を見直す良い
機会と捉えることはできないだろうか。
無駄な業務をやめる、重複している仕事を
整理する、ほかの部署に任せたほうが
よい業務やアウトソーシングしたほうが
よう業務は出してしまう、などできないか?
集まらないならやめてしまえ、採用
おりしも2019年6月1日の日経新聞朝刊で
フリーランス支援の「Lancers」が
「#採用やめよう」プロジェクトの全面広告を
打ち出した。
https://www.lancers.co.jp/saiyo_yameyo/
主張の趣旨は、「一つの組織で」「フルタイムで」
などの、旧来の働き方を変えていこうというもの。
時間と場所が固定された働き方をもっと柔軟に
していくことで、個人個人の力をもっと活用
すれば、人材不足の解消に資するという主張。
これと同じことが、退職者が出た部署にも
言えるのではないか。退職者がやっていた
仕事をまかなうには人を採用するしかない。
退職=採用と安易に結び付けて考えるので
あれば、これほど楽なことはない。
仕事の仕方や担当業務など何事も変える
ことなく、採用する人にも、退職者と同じ
仕事を、同じやり方で行ってもらうことを
望むような募集なら、やめたほうがいい。
求人を出す前に、本当に採用が必要なのか、
もう一度考えてみることだ。
採用は最後の手段であると捉えるべきである。