働き方改革は、いまや国を挙げての
事業となっています。関連する
キーワードも多くあります。
この連載では、関連するキーワードを
ひとつずつ取り上げ、これを人材採用に
活用するための方法について考えて
行きたいと思います。
第七回のテーマは
「同一労働同一賃金」です。
賃金の差別化
人類史上、最も成功した社会主義の国は?
という問いに対して「日本」という答えが
真面目に語られるほど、日本は平等を
重んじ、そして実現させてきた。
それは、賃金についてもいえる。
年功序列の賃金体系は崩れてしまったが、
それでも、おおむねのところは勤続年数が
長く、年長であればあるほど賃金は高い。
同じ職場で、同じような年齢や年次である
者同士なら、賃金に差はあってもそれは
できるだけ少なくあるべきだ。それが職場の
和を作り、チームワークが乱れることなく
進むようにする最善の策。そういうことだろう。
その考え方を発展させ、年齢や年次ではなく
労働の実態、仕事の内容に目を向けたのが
「同一労働同一賃金」ではないだろうか。
雇用体系や給与体系が違うだけで実質的な
仕事の内容が同じであれば、同じ賃金で
あるべきだという考え方である。
やっている仕事は同じなのに、雇用体系が
違うだけで給与の金額が違うのは平等
ではないということだ。
この場合、労働とはとりもなおさず
「成果」と言い換えることができる。
つまりこれは、全く違う「労働」に
対しては、全く違う賃金を支払う
ことをも意味するのではないだろうか。
とびぬけた成果に対してはそれ相応の
賃金を支払うことが一方にあってこそ、
同一労働同一賃金は意味を成す。
それこそが人材採用において強力な
武器となる。
抜け駆けをせよ
非常に高い能力、あるいは希少価値の高い
スキルをもった人材を、思い切った高給で
雇うという考え方は、一部を除いては
ありえないのがこの国だ。世界的に非常な
争奪合戦が繰り広げられるAI人材でも、
日本は劣勢に立たされるのがいい例だ。
新卒の給与にしても、最近でこそ従来より
10%あるいは20%アップさせた
金額を提示する企業が現れた。しかし、
それでも元の金額が小さいので、良くて
数万円の違いでしかない。
しかも、まだ仕事をしたこともなく、
どんな成果を出せるかもわからない
新人に対して給与の差がつけるのは
「お金で人を釣る」行為であると
いっていいのではないか。
そのような、お金で人の横っ面を
ひっぱたくような品性下劣な方法では
なく、優秀な人材、希少価値を持つ人材は、
とびぬけた高い給与を提示することに
よって採用することが必要である。
ほとんどの企業は、ほかの社員の羨望や
嫉妬などによって「和」が乱されるかも
しれないなど、余計な心配をしすぎる
あまり、思い切った高給を提示できない。
そういう企業が多い中で「抜け駆け」
するインパクトは、横並び意識の高い
日本では、ことさらに大きい。
悪習は断ち切るべきだ。
お金に頼ることだけではいけないが、
同一ではない、異なる成果には
異なる賃金を支払うことこそ、
採用には重要な取り組みである。