働き方改革を推し進めるために
人事部が果たす役割は大きい。
働き方改革を生かすも殺すも
人事部次第であるとさえ、
言っていいでしょう。
なぜなら、会社が決定した「方針」を
実際に運営していくための方法を
考えるのは人事部だからです。
この連載では、働き方改革の実現に
貢献できる人事とはどのようなものか、
そして、それとは逆に台無しにする
人事部とはどのようなものか、検証
したいと思います。
第八回のテーマは
「数字に目が行く」
です。
数字との戦い
人事部にとって、働き方改革とは
数字との戦いです。法制化されていく
各種制度に守るべき「数字」が設定
されているからです。
有給取得義務化は、年間で「5日」の
有給を取得させねばなりません。
(ただし、年間10日以上の年次有給休暇
が付与されている場合)
時間外労働の上限規制は、複雑ですが
・月45時間、年360時間を原則
・臨時的な特別な事情がある場合でも
年720時間、単月100時間未満
・複数月平均80時間を限度に
という数字による規制があります。
そのほかにも
・勤務間インターバル制度
(直前の退勤時間から最低8時間は
勤務についてはならない)
・月60時間を超える時間に対する
割増賃金率の引き上げ
など、とにかく数字が盛りだくさん。
数字がたくさんあるのも仕方のない
面はあります。なぜなら、働き方改革
そのものが、働く人への配慮に欠ける
企業に対する「規制」なわけですから。
その意味で、これらの数字を達成する
ことだけに目が行くようでは、働き方
改革を本当に実現できる人事部とは
到底言えないでしょう。
数字によって規制するのは、働き方
改革を実現するための手段にすぎない
ということを忘れてはいけません。
社員が幸せになっているか
数字の達成だけを目的にすれば、
社員にとって働き方改革は
「ありがた迷惑」となってしまう
ことでしょう。
数字を達成できなければ会社が
お咎めをうけてしまうので、
「早く帰れ」「とにかく休め」という
号令をかけるだけはする。何もしないで、
ただ単純に休ませ、早く帰らせるように
圧迫し、監視するだけではなにも解決
しません。
それだけでは済まず、対応できない
社員を「使えない」、従わない社員を
「反抗的」などとレッテルを貼ること
にもなりかねない。
本来の働き方改革は、業務の効率化や
仕事配分の見直しなどを企業として
行ったうえで有給取得、残業削減が
できることを期待されています。
働き方改革を実行した結果、社員が
仕事を家に持ち帰り、自宅やカフェが
仕事場になっているなどがないか。
数字ではなく、そのような「実態」に
こそ目を向けることができる人事部で
なければ、百害あって一利なしです。