働き方改革を推し進めるために
人事部が果たす役割は大きい。
働き方改革を生かすも殺すも
人事部次第であるとさえ、
言っていいでしょう。
なぜなら、会社が決定した「方針」を
実際に運営していくための方法を
考えるのは人事部だからです。
この連載では、働き方改革の実現に
貢献できる人事とはどのようなものか、
そして、それとは逆に台無しにする
人事部とはどのようなものか、検証
したいと思います。
第九回のテーマは
「副業に消極的」
です。
1つの企業に縛り付ける
働き方改革とは、厚労省の定義によれば
「働く人々が個々の事情に応じた多様で
柔軟な働き方を自分で選択できるように
するための改革」
です。
このことと、副業を認めず、1つの
企業に縛り付けて働くことを強いる
ことは相いれないことは明白でしょう。
断言しますが、副業を認めない企業に、
働き方改革を実現することはできません。
働く人のことを理解していないからです。
1つの企業でフルタイムで働くことに
息苦しさを感じる人。
1つの企業だけに生活のための収入を
頼ることに不安を感じる人。
1つの企業では経験できず、獲得できない
キャリアやスキルを求める人。
これらの意思も能力もある人を縛り、
妨げるような「副業禁止規定」が
あったのでは、多様でも柔軟でも
ありません。
これに加えて、人手不足が起こる原因の
一つに「当社だけで」「フルタイムで」
働く人だけを前提にして採用をすること
があります。
シェアエコノミーの考え方を導入し、少し
ずつの時間と労働力を提供してくれる人を
複数使うことによって人手不足を解消し、
仕事を進めていくことが必要になって
きています。副業禁止規定があると
人材採用の点でも著しく不利になる
でしょう。
本末転倒
副業を認めない企業が理由とするのが
「長時間労働を助長することになる」
「労働時間の管理ができなくなる」
「適正に残業代を支払えなくなる」
という3点セット。
自社だけで働いている社員の
労働時間は把握できるので安心だが、
他社で働いている労働時間を管理
できないのは困る、というわけです。
ナンセンスです。
そもそも、一つの企業で働くのではなく
「自分で選択して」副業をしている人は
労働時間をしっかり把握してもらう
ことも、残業代をきっちりと払って
もらおうとも考えてはいません。
もっと自由に働きたいと考えている
からこそ、副業をするのです。
生活のために副業を必要としている
人は、すでに黙ってアルバイトなどに
精を出しています。副業がどうという
問題とは別次元のことです。
残業時間が減ったことで残業代が
減ってしまったからその補填をしたい
人なども同じでしょう。
お金のために働いている人を
前提にして、労働時間管理だの
長時間労働助長などという理屈を
ふりかざすことは、働き方改革の
精神を踏みにじる行為です。