「人生100年時代」
この言葉を聞いて、どのようなことを
連想するでしょうか?
お金、就転職、教育、結婚、出産・・・
いろいろなことが、人生が長くなるに
伴って根底から変わっていくことでしょう。
人材採用も大きく変わっていきます。
人生が長くなり、「働くこと」に対して
認識や価値観が変化する人材と、どう
向き合っていくのか。その問題が会社に
重くのしかかっています。
そんな時代と働く人のニーズをとらえ、
「採用力が高い」会社となるために何が
必要かを考えていく連載です。
第1回のテーマは
「学びを後押しする」
です。
本1冊買えなかった
今でも苦い思い出として残っている
出来事があります。いえ、あのことが
きっかけとなって、私はその会社を
退職する決意をしたといってもいい。
私には、部の予算で本一冊買うことも
許されていなかった。直属上司のハンコが
もらえたので本を購入しました。ところが、
部長のところでひっくり返されてしまい、
結果、本の代金を自分で支払うように
命じられました。
その直属上司が素晴らしい人で、
本の代金はご自分のポケットマネーで
立て替えてくださいました。今でも
感謝しています。その本は今も、
私の本棚にあります。
このようなことは、他人から見れば
たいした出来事ではないのかもしれない。
申請したことが上のほうでひっくり返る
ことなど珍しくもない。そんなことで
いちいち辞めていたら、何度転職しても
足りなくなってしまう。
確かにそうでしょう。しかし、私にとって
みれば、「学びたい」という想いを
踏みにじられたことはどうしても我慢
ならなかった。私の学びを後押しして
くれるどころか、踏みにじる行為をした
会社を許せなかった。
社員が何かを学び、それを業務に還元する
ことを歓迎しない会社には、もはや奉職する
という選択肢はありませんでした。このまま
ここで仕事を続けても、この会社にしか
居場所のない、他では使い物にならない
人材にしかなれないと痛感したからです。
社員の学びを後押しする会社へ
人生100年時代は、一つの会社ではなく
いくつも会社や仕事を変えながら働いて
いくことが求められる時代です。いえ、
そうせざるを得ない時代です。成功する
ためにではなく、生き抜くためにすら
学びが欠かせない時代です。
人間の寿命は延びているのに、企業や産業の
寿命はどんどん短くなっています。
AIエンジニア、ユーチューバー、ブイチューバー
など、数年前にはメジャーでなかった職業が
どんどん生み出されていく一方、必要とされ
なくなって消滅する仕事もたくさんあります。
このような状況にある現在、いつなんどき、
新しい仕事や会社に移ってもやっていけるよう、
準備をしていなくては生きていけません。
働く人は、新しい知識やスキルを常に学び、
身に着けていく努力をしていかなければ
ならないということです。
社員教育にどれだけ予算と時間をかける
ことができるのか?社員の学びをどれだけ
後押しすることができるのか?社員が
自社ではなく外の世界でもやっていける
ように手助けができるのか?ここに
注力して取り組む企業こそが、人生100年
時代に採用力を高めることができます。
もちろん、会社の規模その他事情によって、
できることは限られてくることでしょう。
しかし、そのような、社員の学びを後押し
する気持ちがあるかどうか。心を砕き、
創意工夫をする姿勢は、働く人にはきっと
伝わります。