「人生100年時代」
この言葉を聞いて、どのようなことを
連想するでしょうか?
お金、就転職、教育、結婚、出産・・・
いろいろなことが、人生が長くなるに
伴って根底から変わっていくことでしょう。
人材採用も大きく変わっていきます。
人生が長くなり、「働くこと」に対して
認識や価値観が変化する人材と、どう
向き合っていくのか。その問題が会社に
重くのしかかっています。
そんな時代と働く人のニーズをとらえ、
「採用力が高い」会社となるために何が
必要かを考えていく連載です。
第2回のテーマは
「退職を前提にする」
です。
回遊魚
人生100年時代には、働く人は会社も仕事も
変えながら生きることを余儀なくされます。
安定した職場で、安心して働きたいという
個人の想いとは裏腹に、会社がなくなり、
ともすれば産業そのものが衰退し、消滅
してしまう。そのスピードも速くなります。
百貨店やスーパー、専門店など、アマゾンが
進出した業界で、かつては業界をけん引した
企業が破綻する事例が後を絶ちません。
「Amazonエフェクト」と呼ばれるこの現象、
数年前まではあり得なかったことです。
「Amazonエフェクト」は、今のところは
まだ主に欧米にとどまっているようですが、
いつ日本に波及してくるかわかりません。
その日は近い、いや、もう影響は出ている
のかもしれません。
日本ではっきり現象として表れているのは、
大手都市銀行が突然、就職人気ランキングの
上位から圏外へと姿を消したことが象徴的
でしょう。
事業構造の転換と業務効率の改善が急務と
なる中、大幅な人員削減を発表したことが
原因でしょうが、このときによく言われた
のが「RPA」です。
ロボティック・プロセス・オートメーション
の略であるRPAは、ロボットによって
ホワイトカラーの単純な間接業務を
自動化するシステムです。銀行がやろうと
していることは、RPAを活用することに
よって必要なくなった事務などの人員を
営業など「稼げる」部門に配置転換する
というものです。
この「配置転換」、人事や人材採用の世界
では事実上の「退職勧告」以外のなにもの
でもありません。事務屋さんが、慣れない
営業の仕事に回されても結果を出すのは
並大抵のことではないからです。
新しい「安定」
銀行に起こったことは、もはやほかの
どんな業界でも起こりうることだと
言っても言い過ぎではないでしょう。
変化への対応が遅れればあっという間に
置いてけぼりをくらってしまいます。
もはや安定とは、一つの職場、一つの仕事を
ずっと続けていくことではありません。
まるで回遊魚のように、いくつもの会社や
業界、仕事を渡り歩いていく知識とスキルを
身につけていることです。
そして実際に、働く人は会社も仕事も
変えていくでしょう。そうしないと
ここ数年ぐらいは凌げても、いつ
行き詰ることになるかわかりません。
いつまでも一つの会社で長く働いて
もらうにはどうすればいいかを
考えることは、前提が違う。
会社側も、働く人がいずれは退職して
いくことを前提で採用や教育をする。
それに合った組織づくりをする。
それが採用力が高い会社の姿です。