労働の生産性を向上させることが
人手不足の解消には不可欠です。
それは人事担当者も例外ではありません。
この連載では、
人事部門の生産性向上を目指す
ために必要なことを提言します。
まず一つ目は
「Candidate Experience」
(候補者体験)
です。
前編では候補者体験を損なうと
組織にどれほどのダメージ
あるかについて書きました。
中編では、候補者体験の向上に
関して「やってはいけないこと」
について書いていきます。
衛生要因を語ってはいけない
人々は仕事にやりがいを求めます。
そしてやりがいは、給与や待遇の
善し悪しによってはほとんど
左右されません。
候補者に給与や待遇の良さを
強調してもまったくといって
いいほど響かない。
なぜなら、給与や待遇が良いに
超したことはないのですが、
それは衛生要因でしかない
からです。
衛生要因とは、それがないと
不満に思うが、あっても
動機付けにはならない要因
のことです。
つまり「あるのが当たり前」
のもののこと。
空気と同じような存在です。
呼吸できているのは空気がある
おかげであることを、普段の
生活で忘れているのと同じです。
平均を上回る給与や待遇を
与えていても、それがいつしか
当たり前になってしまう。
そして、働く意欲、やりがいには
まったくつながらなくなる。
取り上げるのは不可能
そしていったん与えられたものが
取り上げられることには、
極端な拒否反応がでます。
賞与の金額が少し減っただけで
転職を考えてしまう、という
ふうに。
なにも、賃上げや待遇改善を
行ってはいけないと言いたい
のではありません。
平均や水準を満たすためになら
どんどん行うべきです。
しかし、給与待遇の良さを
候補者に誇らしげに伝える
ことは厳に慎むべきです。
それしか誇ることがないのか?
と思われるのがオチです。
後編では、候補者体験向上の
ためにどんなことを伝えれば
いいのかについて書きます。
組織で働く人に
なにを提供できるか?
これからの組織は、そこで働く人
よりも寿命が短くなります。
組織の寿命がどんどん短くなって
いっているのに対し、人間の寿命は
「人生100年時代」とも言われるように
どんどん伸びています。
それに比例して、働く期間もどんどん
伸びています。
仮に80歳を超えるまで働くとしたら、
組織は60年間存続するだけでなく、
雇用し続けられるだけの収益を上げ
続けなければなりません。
そんなことが可能だと、誰が約束
できるでしょうか?
途中で、申し訳ないが別の組織で
働いてもらうことになる可能性の
ほうが明らかに高い。
ならば、組織を離れても生きていける
スキルや人脈を蓄えるサポートをする
義務が組織にはある。
そして、候補者体験のためにアピール
すべきは、こうしたサポート体制の
ほうなのです。
組織が今、提供すべきは日々の生活の
糧ではありません。
働く人が、明日の生活の糧を稼ぐ
ために必要になるものを習得する